厳寒期の深夜、高速道路で10種類の防寒アイテムをテストします。
このページで行われるテストの目的は
『オールシーズンジャケット+防風ジーンズ』の秋装備を『本格ウインタージャケット+オーバーパンツ』クラスまでアップグレードさせること。
ルールは簡単です
秋装備のまま、真冬の深夜、高速道路ツーリングを決行します。
耐えられなくなったら防寒アイテムを装着。
オーバーパンツかレインウェアを履いた時点でゲームオーバー。
1時間の走行にも耐えられなくなってもゲームオーバー。
今回用意した防寒グッズは10種類。重さはジャスト1kg。
巾着に詰めて『極寒期用エマージェンシーキット』の完成です。
これをバイクに積み込み
3℃の高速道路を使い、5時間のフィールドテストを完走!
防寒グッズ達の使用感を報告させていただきます。
寒いからとインナーやアウターを買い足し、揃えてもなかなか効果が実感できずにムダな買い物が増えてしまうこと、ありませんか?
私はありました。
ずいぶん昔の話になりますが、暖かそうなインナーやミドルウェアをとっかえひっかえ試しては試行錯誤の連続。
秋から冬の初めの時期、日の出ている時間帯、太平洋沿いの市街地は10℃以下の気温になることもまれで、3シーズンジャケットを羽織るだけ、防風パンツの下にタイツを一枚履きこむだけで十分だったりします。
ところが太陽が沈んだあとの時間帯、風が強かったり高速道路の走行になると体感温度も急激に下がり、たった1時間程度の走行も困難になってきます。
このあたりの内容はみなさんよくご存じですよね。
防寒対策を始めたライダーはみな、いろいろ防寒グッズを試しては、効果があったりなかったりの繰り返し。
ウェアは厚くなるにつれサイフが薄くなる負の連鎖の幕開けです。
なかなか満足に至らない防寒グッズの数々。
ごく普通の秋装備を安価な防寒アイテムを使って本格冬装備にアップグレードなんて本当に出来たのでしょうか!?
さっそく実証フィールドテストに出発します!
10種類の防寒アイテムフィールドテスト開始
ごく一般的なオールシーズンジャケットと3年前の防風ジーンズワイルドファイア。
ユニクロのヒートテックインナー上下とユニクロフリース、無印良品の発熱ソックス。
これがスタート時の秋装備です。
条件 | 気温(℃) | 10-15 | 11月~12月初旬 秋から初冬の 一般的な市街地装備 |
|
速度(km/h) | 80以下 | |||
経過時間(h) | - | |||
上半身 | ||||
アウター | 3Sジャケット | 〇 | 〇 | スリーシーズンジャケットの防風性とミドルによる保温性の微調整だけで対応することができます。 |
ミドル | フリース | 〇 | ||
適当なミドルウェア | 〇 | |||
インナー | ヒートテック等 | 〇 | 〇 | |
結果 | 過 | 快 | ||
下半身 | ||||
アウター | オーバーパンツ | 〇 | オーバーパンツを使えばちょっと暑く、ないと少し肌寒く感じることもあります。インナーの機能に左右される季節です。 | |
防風ジーンズ | 〇 | 〇 | ||
インナー | ヒートテックタイツ | 〇 | 〇 | |
結果 | 過 | 快 |
高価な防寒グッズも使い方を間違うと防寒性能を発揮しません。
逆に安価な防寒グッズでも使い方次第で化けます。
今回の用意した防寒グッズはたっぷり10種類!
これらの効果的な使用方法や体感を報告させていただきます。
出発直前、ミドルウェアの周辺温度が22℃、気温は10℃前後。
意外ですが湿度はウェア内部の方が低い状況です。
走ってなければいたって快適。
深夜23:00 気温9℃ 走行開始!
気温9℃台、深夜とはいえバイクに乗っていなければ全然寒くありません。
とにかく寒さを求めて近くのICから高速道路に入ります。
路面凍結も怖いですけど、まずは寒そうな京都、滋賀の方に向かって北陸道を目指してみました。
出発して15分、市街地走行、全然寒くありません。
上半身はポカポカ。下半身、指先、靴の中はすこしひんやり。
市街地の10℃前後、いつまでも走れそうな気がします。
高速道路に入ると少しだけ状況が変わりました。
寒くはないのですが100km/h前後、さっきより涼しく感じます。
でもこのくらいなら全然平気。
いつまでもこのままでは面白くないのでとにかく体を冷やすことにします。
股を開いて足に走行風をあて、手の指の間も広げてとにかく体に走行風を当ててみます。走行中、気温を確認すると8℃台。
撮影していたGoproはこの程度の寒さでバッテリーが電圧低下、電源が落ちてしまいました。
動画はもういいや。
しばらくして、ようやくすこし肌寒くなってきました。走行開始から約40分。
まずは京都の桂川SAに入ります。
防寒対策グッズ(1)
ラフアンドロード ハンドルカバーを装着!
ここまでは「オフ車用ハンドガード」+「ゴールドウイン製ウインターグローブ」で走ってきました。
指の間を広げて、強引に寒くしたのですが、この装備だけでも10℃前後の高速走行、5℃までの市街地走行は十分カバーしていると感じます。
このラフアンドロードのハンドルカバー、今回のテスト走行折り返し地点で3℃台まで気温が低下しましたが、長時間走行になんの支障もありません。
5時間ほぼ走りっぱなしでしたが、体感的には「快適と不快のちょうど中間」くらいの感触です。
バイクにハンドガードが付いていたため、これを収められる大きさが必要でした。
ハンドルカバーの中でも最大級の大きさを誇るラフアンドロードのRR5917は昔から定番ハンドルカバーです。
通りすがりのR25に着けてみたところ、大柄すぎて似合いませんでした。
機能的には他のハンドルカバーも大きく違いません。バイクに合わせて選びましょう。
うまく機能させるコツは、できるだけ走行風の吹き込みを防ぐためにすき間ができないように装着すること。
ウインターグローブだけでは寒いという場合、ウインターグローブを何度も買い替えるようなことはせず、素直にハンドルカバーか電熱装備を検討してください。
ハンドルカバーの利点
状況が過酷なほど、巡航速度が上がるほど効果絶大。
バッテリー問題、故障問題と無縁で長寿命。
ハンドルカバーの欠点
スイッチ類が見えなくなることでの操作性低下。
すき間なく固定するための小改造やスポンジ等の利用がちょっとだけわずらわしい。
ハンドルカバーの総評
スイッチ類の位置はすぐ馴れます。外観が許せるなら装着すべき厳寒期装備。
電熱装備のバッテリー切れ等のアクシデント時にも一定の防寒力を発揮します。
気温が低下するほど、巡航速度が上がるほど、その恩恵が際立ちます。
防寒対策が不十分であれば、時間の経過とともに指先の冷えが凍えに進み、操作不能に陥ります。
防寒対策が必要十分なら、多少低い体温で体の発熱と放出の均衡が取れていれば、いくら走っても指は動きます。
この状態を快適ではないと捉える方もたくさんいると思います。
いま私が使っているゴールドウインのウインターグローブはかなり厚みがあります。これ以上の厚みは操作性が落ちすぎるので正直おすすめしかねます。
よりポカポカ感を出したい場合、ヘタにウインターグローブに追加投資はせず
電熱装備を検討しましょう。
防寒対策グッズ(2)
100円ショップのボアソール!
8℃前後、まだ1時間も走っていないとはいえ、足もすこ~しヒンヤリしてきました。
今回履いているブーツはオフロードブーツの丈を短くしただけの「FOX COMP5S」というオフロード用のショートブーツです。
もう販売は終了していますが、現行のFOX COMP5をくるぶし上でちょん切っただけの構造をしています。
市街地、林道走行では、「くつ下2枚履き」で気温ひと桁台を乗り切れる、なかなか防寒性能の高いブーツです。
まだ操作に全然問題はありませんが、すこしヒンヤリしています。
何度もPAに止まるのも面倒なのでここで100円ショップのボアインソールを装着します。
今回使用したものは近所の100円ショップで販売しているものを適当に選びました。
防寒用インソールの利点
数少ない足先の対策グッズ。
日中のライディングに最適。
防寒用インソールの欠点
10mmのインソールが入るブーツはそもそもバイクに乗りづらい。
防寒用インソールの総評
寒い日中の下道ならとても有効な防寒アイテムなのですが、極寒ステージの夜間といった厳しい状況では100均のインソールではやや役不足。
アウトドア専門店やワークマンなどの商品を見ればわかりますが防寒対策用厚み10mm以上のインソールが売られています。
2023年現在は本格的な防寒インソールをつかっています。暖かい上とても丈夫です。
2017年に買ってから買い換えることなく使っています。
価格は高いですが長く使えることを考えるとオススメです。
しかしこういった極厚インソール類は、一般のブーツやライディングシューズに入ったとしてもキツくて履けないといったことが起こります。
それでもムリをして空気の層を押しつぶして履くと、熱伝導率の低い『空気』という物質が靴内から追い出され、『空気』の約10倍(※補足)熱伝導率が高いウレタンなどの物質で靴内が満たされます。
これは、空気が逃げた場所に限りますが、熱伝導率で約10倍に相当する分、防寒性能が落ちることを意味します。
使うブーツのサイズに注意が必要。
ブーツを変えられないのなら、品質の良いインソールが必要。
防寒対策グッズ(3)
発揮するのかダブルの効果 手作りアルミソール
さきほどのボアインソールに加えて、登山やトレッキングする方に定番アイテム、「アルミソール」を投入します。
今回用意したのはアルミシートをボアインソールの形状に切り出したお手製、ホームメイドアイテムです!
百円ショップで売られている、お風呂の湯に浮かべるタイプのアルミ保温シートが薄さと丈夫さのバランスが良いようです。
繰り返し使えそう。
アルミインソールの利点
冷えてない足をより暖かくさせる。
アルミインソールの欠点
アルミインソールの総評
反対に冷え切った場所ではくつ下以下の防寒性能。
あまりなじみのない方もいるでしょうが、アルミソールは効果の高さが証明されている防寒グッズです。
アルミ張りのインナーパンツやベストもよく見ますよね。
使用者によっては暖かすぎると評判のアイテムです。
履けば魔法のような効果を期待しがちなアルミインナー、実は落とし穴がぽっかり開いてます。
その効果は状況次第、使い方次第。
アルミシートの原理は皮膚からの放射熱を反射することです。
放射熱はヒトの肌表面から見えない波長の光、電磁波の形で放射されます。
アルミは純度が高ければ、放射された電磁波の9割ほどを内側に反射してくれます。
感覚的には小出力のヒーターが肌の近くにある感じ。
これがアルミインナーで体が温まる原理です。
どのくらいの温かさかというと、体温36℃、外部温度が0℃を計算してみると、両方の足の裏だけで約8.8Wの熱量が放射だけで逃げ出している計算です。
反射するさい、いろいろロスがあったとして6~9割が反射されて体に戻ってくるとして、足先に戻ってくる熱量は約5~8W。
ごく単純に考えると、アルミシートはカイロ1個分の暖かさを体に返してくれていることになります。
ところがそんな計算通りにいかないのが防寒。
思い出してください、ここは極寒の高速道路。
そもそも、アルミの反射云々以前に、冷え切ったブーツと足が接触による熱伝導でどんどん冷えていきます。
気温は3℃。足の表面温度は冷え切っている状態で20℃。そしてブーツ内温度が15℃だったらどうでしょうか?。
この状態で足からどのくらいの放射熱が出ているのか計算してみると、なんとたったの1.2Wです。
この状況ではアルミインソールが返してくれる暖かさもスズメの涙です。
体から出る放射熱というのは(体の表面温度-外部温度)に比例します。
極端な話をすると、足の周りの気温が20℃、足先温度が20℃だった場合、体から逃げる放射熱はなんとゼロ!
体が熱くそのすぐ外側がとても冷たい状態でないと、放射熱はほぼ発生しません。
そんな状況ではアルミインナーが反射できる放射熱がありません。
アルミインナーは体が十分に暖かく、かつ外部温度(ここではブーツ内温度)が十分冷えているときだけ効果を発揮する、非常に使い方の尖ったアイテムなのです。
カイロを仕込んだお腹周りにアルミインナーを装着すればその効果は絶大。
つねに足を動かし、足の筋肉で発熱している登山家にとっては効果的なアルミインソールです。
しかし、バイク乗りのブーツ内の防寒対策としては、相性が悪かったとしか言いようがありません。
防寒対策グッズ(4)ネオプレン製トゥウォーマー!
今回用意したのはネオプレン製のつま先の防寒グッズ、トゥーウォーマーです。
装着感に若干の違和感と窮屈さを感じますが、スキマ風の多いシューズに使うと威力を発揮する防寒アイテムです。
日帰りツーリングでよく使っている防寒アイテムです。
去年ツーリング先で紛失してしまい、ちょうどいい機会なので新調しました。
肌寒くもうちょっと暖かくなりたいときや、風通しのいい一般アパレル系の靴を履いているときに使うと効果絶大です。
トゥウォーマーの利点
ダウンや中綿には劣るがそこそこの保温性が期待できる。
トゥウォーマーの欠点
防風性をしっかり備えているブーツには逆効果の場合も。
トゥウォーマーの総評
靴の中に入れるタイプの防寒グッズ共通なのですが、基本的に『空気より熱伝導率の高い』素材でできています。
防風性の悪いシューズ類と組み合わせると効果がある反面、保温性は落ちます。
発泡素材とはいえ、強度を出すために空気の含有量を極端に落としたネオプレン素材をつかっていること、ドライスーツの様な厚みを持たせていないことが原因です。
ネオプレン = 発泡素材 = 保温性が高い
これは思い込みです。
厳寒期に厚みを限定されたネオプレン素材ではくつ下より保温性の落ちる詰め物でしかありません。
肌寒いくらいで使えば効果的なネオプレンのトゥーウォーマーも万能選手ではありません。
厳寒環境においては丈夫な防風・防水素材であること以上の効果は期待せず使用することをオススメします。
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同時投入した3つの足元の防寒対策グッズ。昼間の峠や近場ではどれもそこそこ暖かくなるアイテムでした。
ですが、これらが効果を発揮するには条件があります。極寒というほどの環境ではなく、体も冷え切ってないことがその条件です。
防寒、とりわけ保温とは熱伝達で移動するエネルギーの速度を遅らせること。
いくら保温を頑張ったところで、足先がある程度の体温を維持していなければその努力は無意味です。
魔法瓶に熱い湯を入れるとなかなか冷めません。暖かいまま。
一度冷めてしまった水は魔法瓶に入れても、冷たい状態を維持するだけです。
さきほど説明したとおり、アルミシートで放射熱を熱源にしたくても、そもそも冷え切ってしまった足先に放射熱はほとんどありません。
つまり極寒の環境下、下半身の熱量をもっと増やして足先の体温を上げるか、その他の方法で熱源を追加しない限り、この3つの防寒アイテム、何の効果もありません。
血液の循環による熱の供給と放熱が均衡しているのが現在の足先の温度。
寒さが増すにつれ、血流は悪くなり、熱の供給が低下し、放熱は増えていきます。
夜間・高速道路・気温1桁前半、極寒の条件がこのあたりで一線を超えた瞬間、急速に何をやってもブーツ内の足先は凍える状況がやってきます。
誤解のないよう繰り返しますが、これらの防寒グッズは実績のある効果のあるアイテムです。
ただし、ちょっと肌寒いのをリカバリーする程度で活躍する防寒対策グッズです。
環境が過酷になるにつれ、加速度的に防寒性能は落ちていき、最後にはくつ下と変わらない、むしろくつ下の方がマシなくらいにまで防寒性能が消失します。
今回のフィールドテストの環境下、時速100km/h前後の速度なら10℃までなら「足先は快適」。
3~10℃の気温で「凍えないまでもずっとガマンしている」状況でした。
足元の寒さ対策、実はできることがすごく限られています。
結論を言えば、限られたスペースしかないブーツ、極寒の状況下、靴下2枚履いても足が冷え切ってしまう状況では中に仕込むタイプの防寒グッズはほとんど効果は発揮しません。
もし、靴底のソールに1cmくらいの厚みのフェルトを、足の甲にやシンサレートやダウン、ボアなどで1cmの層を作ることができれば、おそらくこの状況を乗り切れます。
けどそんな靴を履いてはバイクに乗れません。
それではどうすればいいのかというと・・・
長くなりそうなので足元の件、今回はここまで!
今年中に第2回フィールドテストで取り上げる予定です。いましばらくお待ちください!
防寒対策グッズ(5)第2のインナーウェア『防風ミッドインナー』
さて、手元足元の対策を行って再スタートを切ります。
外気温8℃、手元が冷えから解放されて、足元もさっきよりはマシになりました。
けれど30分も走る頃には肩や二の腕のあたり、太もものあたりがすこし肌寒くなってきました。
上半身に用意した防寒グッズもまだまだあります。
テンポよく着こんでいかないと使い切れるかちょっと心配なので何かつけてみることにします。
さっそくPAに入ってこれを着込みます。
モリト製の防風・防寒・透湿をうたう高機能ミドルインナーです。
今回の防寒対策グッズでは一番高価なもの。
上下それぞれ低下で2,700円もします。
昼間の市街地・峠ではとても効果的な防寒アイテムでした。
かなり薄手で保温性も十分。
フリースの下に着こむことでトレーナー1枚分くらい、気温にして1、2℃ほど上がった感じがします。
利点
安定した防寒性があります。全身、暖かさが確実に向上します。
肌寒い程度の日、厳寒期、走行シーンに左右されない汎用性。
防風性・保温性・透湿性のバランスが良好。
薄く持ち運びに便利。タイトなジャケットでも着やすい薄さ。
安いヒートテックインナー系との相性が良好。
ヘビーウェイト・メリノウール等極寒地用高級インナーに比べずっと割安!
欠点
割安とはいえ、そこそこいい値段。
洗濯は手洗い指定。
総評
肌寒い日中、厳寒シーンともに活躍できる汎用性と高い防寒性はかなりのもの。
緊急用に携帯するよりも出発時から着こんでおく使い方が良い。
昼間はミドルウェアを脱いでおいて、夕方ごろ肌寒くなってからフリース等を着るような使い方もできます。誰にでも活用シーンが見いだせる、どこでも使える汎用性の高さは特筆もの。
持っていてもジャマにならない点からも、ぜひオススメしたい逸品です。
ミッドインナー プラスレイヤーを上下着込んで再スタートしたところ、かなり快適になりました。
特に上半身はポカポカ。下半身もポカポカとまでは言わないまでも太ももの肌寒さは消え快適です。
夜間の高速道路5℃~10℃の外気温は対応している感じです。
一般道しかはしらないのなら、もう5℃低くても快適ポカポカとはいかないまでも走行に支障はなさそう。
しばらく走行していると気温が5℃台に突入します。
ミッドインナーでかなりマシにはなりましたが、相変わらずの太ももの肌寒さに加えてヒザの寒さも出始めます。
上半身もそれほどでもなですが、二の腕、肩あたりに肌寒さを感じます。
もともとこの部位、オールシーズンジャケットの中でも一番薄い場所です。
ジャケットが腕にあたり冷たさが伝わってきます。
ここにも少し空間を作ってやりたいところ。
顔もすこし寒くなってきました。
そろそろ2、3℃刻みで寒さが強くなるのを実感します。
1桁台前半にさしかかり、用意したすべての防寒グッズを一挙投入することにします。
防寒対策グッズ(6)
『フリース フェイスマスク』
おたふくの安いフリース製の防寒フェイスガードを投入します!
バイク用ブランド品は数千円しますが、フェイスガードは素材を選ばなければ数百円で購入できます。
今回は長めのフリース地よりも丸めてコンパクトに収納できるタイプのものを探してみました。
首元に垂れているフリースがちょうど風の直撃を防いでくれるので、顔だけでなく首からすこし下の範囲の防寒にも役立ちます。
肌にあたる部分もフリースで触り心地が良好。
バイク用のものがたくさん販売されていますが、首元が多少覆える長さがあればどれを選んでも満足度の高いアイテムです。
利点
値段にかかわらず効果的。フリース地がおすすめ。
首元の寒さ低減にも有効。
ものによっては顔や首以外の防寒にも役立ち、持ち運びもかさばらない。
欠点
シールドが曇りやすくなる。
総評
この気温での高速走行では、少しでも体温の流出を防ぎたいところ。
昼でも夜でも気軽に付けて寒さを防げる点で一枚は持っておきたいオススメの防寒アイテムです。
このフェイスガード、裏面とアゴから下がフリース素材になっています。
下に垂れたフリースが適度な長さなので、バタつきも気にならず首元にふきこむ風を和らげてくれます。
欠点というほどでもないが、吐息がヘルメット内に入りやすくなるため、シールドの曇りどめ対策はしておきたいところ。
ちなみに食器用中性洗剤で簡単にくもり止めをすることができます。
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価格も700円ほどとかなりお手頃。コストパフォーマンスも良好なうえ、快適性が大幅に向上するこのフェイスガードは今回のテストでかなり好印象。
防寒対策グッズ(7)
『フリース ネックウォーマー』
首が寒いと感じているわけでもないのですが、素肌の露出や首元からウェア内に流れ込む冷気は確実に体温を逃がします。
平気だと思いつつも、長時間走行の際にはぜひ付けておきたいアイテムですね。
ネックウォーマー
首の防寒だけでなく、首元から入る冷気をふさぐ役割を担っています。
今回使うのは肩までカバーするタイプですが、このタイプは首や腕回りまで窮屈になりがちです。
その場合、ウェアの外側で首に巻くタイプのものがオススメ。
フェイスガードとしても使える長いタイプもあるので、これらをひとつに纏めてしてしまうのも効率的ですね。
ネックウォーマーを一枚も持っていない方は、ホームセンターやワークマン、100円ショップにあるものをとりあえず使ってみてはいかがでしょうか?
どこに収納してもそれほどジャマにならないので、いつも携帯しておきたい防寒アイテムです。
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防寒対策グッズ(8)
『Yamay ニーパッド』
今回のフィールドテストでの難所はいくつかありますが、そのひとつが『防風ジーンズ、オーバーパンツなし、電熱装備なしで厳寒時走行』です。
防風ジーンズとはいえ、太ももにひと桁前半の温度の走行風が長時間あたりつづけると足の感覚がかなり広範囲でなくなります。
それに狭いジーンズの中、着込める枚数も限られできる対策もそれほど多くありません。
そんな過酷かつ自虐的な状況をなんとかしてくれるのがこのニーパッドです。
Yamay ニーパッド
膝への走行風の直撃を防ぐだけだと思うでしょ?
このニーパッド、厚手で膝への風の直撃を防いでくれる上、せまい範囲ではありますが保温効果もかなりのもの。
膝の骨が芯から冷えていくと足全体がひんやりとして不快です。
不快なだけではなく、足の血流は冷やされたあと、内臓付近を通って心臓へと戻っていきます。
内臓が冷やされると代謝がより悪くなり、体の発熱量はさらに低下することになります。
腰から下が冷え切る状態というのは、思っているよりずっと深刻な状態です。
基本的にガタガタ体が震え出したら
「軽く生命の危機が迫っている」
程度の認識はもって丁度いいくらい。
その方が長生きできて、バイクにも少しだけ長く乗っていられるかと思われます。
みなさんも下半身の防寒はぜひしっかり手を抜かれませんように。
さてこのニーパッド、膝の防寒だけかと思いきや実はそれだけにあらず。
乗車姿勢を取るとパッド上端2cmほどがフラップの様に立ちあがります。
愛車の場合、このハネが太ももにあたる走行風を半分くらいの範囲に低減してくれます。
実はこれ、ゴールドウインの独自技術、ウインターグローブに使われている仕組みなんです。
グローブ上面に張り出した突起、たったこれだけで指の背にあたる走行風が激減します。
もちろん、限界以上の寒さでは焼け石に水なのですが、それでもゴールドウインのウインターグローブが他社に比べ頭一つ分防寒性能が高いのには、構造上の工夫もあったというわけです。
この手の工夫は欧州ブランドの製品に似たものを見つけることができます。
おそらく特許か何か取ってるでしょうし、大っぴらに盗用しているメーカーはないと思いますが。
この日本バレーボール協会公認の膝用サポーター、この形状ならとアタリを付けてみたらしっかりフラップの機能を果たしてくれました。
このニーパッド、ポカポカ快適とはいえないまでも、走行に支障をだすことなく、防風ジーンズで乗り切れた立役者のひとつでした。
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防寒対策グッズ(9)
『フリース生地とリンゴの保護ネット!』
二の腕が肌寒くなることはこれまでの経験で織り込み済み!
ということで持ってきたのは家に転がっていたネットとフリース生地です。
突然の寒波に応急処置的に布や新聞紙をウェア内に詰めることはよくあります。
新聞紙はちょっと・・・と思う方も多いので、それならばと小さなフリース生地を入れることにしましまた。
たまたま家に転がっていたので、ハクキンカイロ用のフリース袋とリンゴが入っていたネットを持ち出してきました。
ネットを腕に装着、間にフリースを挟みます。
このネットは発泡素材で熱を通しにくい・・・
『ピリッ!』
『・・・』
破れてしまったのでインナーの中にフリース生地を直接突っ込みます。
うん、わりと暖か。
何十年も前から伝わるライダーの知恵に
とにかくウェア内に何かを突っ込む
というのがあります。山地を超えて急激に気温が下がったときに、新聞紙を体に巻いてウェアを着込むだけでわりと暖かくなる経験、したことありませんか?
そんな時にちょうど新聞紙が手元にあればいいのですが、ツーリングに新聞紙を持っていく方もあまりいません。
防寒対策グッズ(10)
『クッション材に偽装したエマージェンシーアルミシート』
アルミインソールを作った後に残ったアルミシートを、太ももやお腹に巻きやすいサイズに裁断、長方形に束ねてビニル袋に詰め込みます。
ついでに使い捨てカイロや本物のアルミエマージェンシーシートなんかもポイポイと放り込んでおきます。
これをタンクバッグの底やケースのクッション材として放り込んでおけば、場所もとらず持ち運びも便利。
このままお腹にはさんでもよし、封を開いてカイロを取り出すもよし。
バイクに乗らないときは防災袋の中に保管しています。
今回使わなかったのですが、一応ご紹介。
10種類の防寒アイテム、評価と所感
これで用意した防寒グッズはすべて装着しました。
手作りしたいくつかは装着前に破損してPAのごみ箱の闇に葬り去ったりしましたが、これらはカウント除外ということで。
このあと、夜が更けるにつれ気温は3℃台まで低下、走行にも支障なく、滋賀を過ぎたあたりのSAで休憩をとります。
外気温3℃のなか、ラーメンをズルズルと啜りながら行程を振り返ります。
最後まで走り切れ、寒さに凍えることもなく走り切り、目的は達成しました。
目的は達成したのですが、いまひとつ満足感には欠けます。
今回の防寒グッズのセットさすがに「全身ポカポカ」というレベルまで到達できず。
逆に足りていない防寒の課題が明らかになりました。
まずは極寒環境での後付け防寒対策、上半身、手先、下半身、足先の4つの部位に分けて評価と所感を述べます。
1.上半身
結果は「走れるレベル」よりひとつ上、「快適」に近い状態でした。
オールシーズンジャケットは十分な総合的な防風性と、手首・首元からの冷気の侵入を防ぐ工夫、インナー類の装着時にも内部に多少空間が残るサイズ的なゆとりがあれば厳冬期の使用に耐えます。
今回内部に着用したものは、ユニクロのフリース、モリトのミッドインナープラスレイヤー、ヒートテックインナー(エクストラウォーム・極暖系)の3枚。
大型スクリーン装着車だったので、この3枚でポカポカするレベルに収まりました。
スクリーンが無い車種の場合、薄手でもいいのでアウターの上にレインウェアやウインドストッパーが必要かもしれません。
ウェア内温度はある程度均一でしたが、触った感触では腹部がやや冷たくなります。
これは、下半身で冷やされた血液の通り道が内臓付近にあるため。
もし下半身の対策が不十分であれば、上半身の状態にも影響はでるかもしれません。
厳冬期の防寒対策は部位ごとの防寒レベルもさることながら全体のバランスも非常に重要です。
2.手元
ハンドルカバーとウインターグローブを装着することで厳冬期の対策としては十分。
ですが上半身の対策が十分とられていたことも成功の要因です。
血流での指先への熱の供給と防寒対策後の熱の流出する量、このふたつがバランスすることで手先の温度が決まります。
十分に体温を維持できていたのでハンドルカバーだけで済んだとも言えます。
電熱グローブやグリップヒーターを併用することで血流への熱供給がされれば、さらに寒冷耐性は向上しますが、いくつか注意点があります。
手先の感覚は自律神経のセンサーの役割もあるので、指先だけ温めると誤動作の恐れがあります。
指先や足先をあたためると、内臓への血流が増加、内臓へ冷たい血液が流入し代謝機能が低下、体温が下がることも。
厳寒期のツーリングでは、必要以上の加熱すらも体温低下を招く可能性があることを忘れずに。
3.下半身
快適とはいえない状況でした。走り切れましたが今回の対策では十分とはいえず、足先の寒さ、腹部の冷えを誘いました。
防寒ジーンズの内部に小さな対策をたくさんとるよりも、外部に一枚、何かで覆ってやる方が効果的です。
脚部にどれだけ走行風があたるのかはカウルの有無や車種でまちまち。
オーバーパンツ1枚で十分な車種もあれば、そうでない車種もあります。
足先とともに下半身の防寒は手を抜けません。
真冬のツーリングならタイトなインナー+ダウンインナー+防風ジーンズでスタート、昼間にオーバーパンツが無くても平気な装備で出発し、帰路の夜間は携帯用オーバーパンツやレインウェア等で対応を考えておけば安心できそうです。
下半身の重ね着が面倒な場合、ウインターライディングパンツ類を最初から選ぶのが最良の選択かもしれませんが・・・
年にそう何回もある極寒ライディングでもないので、高価なパンツを選ぶのはなかなか難しいものがあります。
冬季の外出にはモコモコのオーバーパンツが最適な回答なのかもしれません。
4.足先
今回かなり冷えましたが、原因のひとつが下半身の防寒能力の不足でした。
ブーツ内のスペースも限られるため、保温や断熱といった系統の内部対策は効果的ではありません。
足先の防寒については素材や構造上の問題を露出させるにとどまりました。
以前乗っていたバイクでは高いステップの地上高+バックステップ+アンダーカウルで風雨の影響が小さく今回の装備でも十分だと思い込んでいたのですが、今乗っているバイクだと足先がまともに風にさらされてしまいました。
まとめ。課題は下半身と足先
いかがでしたか?
オールシーズンジャケットと防風ジーンズのスタイルで、防寒グッズを追加していけばポカポカ快適になるだろうと思い立って企画したこの防寒フィールドテストですが、やればやるほど目につく問題が出始めます。
いくつも防寒グッズを装着するのだって面倒ですしね。今回は手作りアイテムでお茶を濁したところもありますが、いくつも防寒グッズを買ったところで合計すると普通にバイク専用の効果的な防寒ウェアを買えてしまうわけです。
冒頭の言葉を思い出します。
『ウェアは厚くなるにつれサイフが薄くなる負の連鎖の幕開けです。』
防寒の闇は深いですね。
課題は不十分だった下半身と足先です。
実感として思うのは電熱やカイロを使った方が早いなということ。
電熱は初期投資の大きさと故障・停電リスク・バイクの発電量との兼ね合いで除外、使い捨てカイロとハクキンカイロの活用を考えています。
足先については下半身の防寒力不足も原因のひとつでした。
下半身対策とともに、インソール類の再評価とブーツ3種類を履き比べてみることにします。
今回の結果に懲りず、第2回フィールドテスト開催決定です!
そうそう、汗冷えについてすっかり書き忘れていました。
余談ですが今回のテスト、汗冷えはありませんでした。
汗をかかなくても人体は蒸気を放出しています。
汗冷えと体質の関係はよく語られますが、これは自律神経や体脂肪の量にも左右されるためです。
本来の最低限の蒸気の放出では汗冷え対策をするほどの状況ではありません。
汗冷えに悩まれる方は、指先やつま先に必要以上の温度を持たせることや精神的なストレス等、自律神経の誤動作の可能性もあります。
極端に熱くなる部分をつくらないことで汗冷えリスクが減るということ。
心にゆとりをもつことが第一の対策なのかもしれません。
長らくお付き合いいただきありがとうございました。