ファンティック Caballero Scramblerシリーズ
2023年、ホンダから新型CLシリーズが販売されますね。
結構よくスタイリッシュなバイクなので実物を見るのが楽しみです。
ところで、ファンティックのキャバレロ スクランブラー 500というバイクをご存じですか?
取り扱い店舗も少ないのでご存じの方は少ないかもしれません。
ファンティックの歴史からこのスクランブラーの初出来歴の説明から初めてもいいのですが・・・長くなるので詳細は各々でお調べください!
さて、詳細の説明は他サイトに譲るとして、ひとつだけお伝えしなくてはならないことがあります。
それは、このキャバレロスクランブラーシリーズが
近年のファクトリーメイド・ネオスクランブラーというカテゴリの中で最もスタイリッシュで現代風の解釈で作られたバイクであるということです。
個人的にはこのキャバレロが近年のネオスクランブラーの中で最もカッコいいバイクだと思っています。
元来、スクランブラーという乗り物は長らく「欲しければ自分で作るしかない」タイプのバイクでした。つまり基本的にカスタムバイクなのです。
近年大手メーカーにより製造されているスクランブラーというのは、法規制を遵守しつついかにカスタムバイクの風貌を与えられるのかがキモであり最も重要な要素でした。中には既存大排気量モデルのサスを長くしてアップマフラーを付けたようなモデルもありますが、そういったモデルは高速でもそこそこスピードが出てしまいます。必然的に車両重量はかなり重くなります。
そんな本来のスクランブラーらしさが薄れ、外観的な『らしさ』がもてはやされる中、登場したキャバレロスクランブラーは、古典的スクランブラー像と現代風の会社を上手に織り交ぜてデザインされています。これぞスクランブラー!といいたくなるスタイルです。
このキャバレロスクランブラーがどのくらい「スクランブラーらしい」のか、興味はありませんか?この車両がどのくらい古典的スクランブラーのテンプレートを踏襲しているのか検証してみたいと思います。
写真は500ccモデルですが、ホンダの新型CL250との比較もできるように過去に販売されていた250ccモデルでの検証を行いたいと思います。
古典的スクランブラーのテンプレート
さて、以前CL250のリアルスクランブラー度を検証したときに同じことを説明しましたが、古典的なスクランブラーというものはそのカスタム手法が確立されています。
・カフェレーサーより小さくスリムなタンク
・小さくフォークに寄ったヘッドライト
・最小限のメーター
・短いシート
・リアツインショック
・基本的にアップマフラー。ただし必須ではない。
・合法な範囲で不要な物をすべて取り除いたミニマルな構成
・トップエンドのパワーよりもトルクを優先した空冷単気筒もしくは2気筒エンジン
・視覚的にロードバイク起源を失っていないこと。
キャバレロスクランブラーがこれらの古典的なカスタムバイクとしてのスクランブラーとの類似度についてそれぞれの項目を分析してみましょう。
スクランブラー10の要件を検証
検証1.無駄をそぎ落した軽量な車体
乾燥重量で140kgと言われているキャバレロスクランブラー250ですが、車両重量に換算するとざっくり計算して160kgいかないくらい。ホンダの新型CL250と比較するとおそらく15~20kg軽いものと思われます。
さまざまな規制の中、十分にがんばった軽量な車体と言えます。
軽量な車体という評価基準については、近年様相が変わってきています。
カスタムスクランブラーの中にはオールドトライアンフやBMWの空冷フラットツインをベースにしたものも多数あります。それはそれで結構重いのですが、シートレールを短く加工したり、ミニマルな構造にすることでスクランブラーとして認知されます。
軽量な車体という評価基準はあくまで古典的スクランブラーについてであって、近年のネオスクランブラーにおいては必ずしも車両重量は重要視されていないと思います。
検証2.カフェレーサーより小さくスリムなタンク
決して小柄とはいえない12リットルの大容量を持っています。
確かに利便性の高いタンクでデザインの美しさは評価したいところですが、古典的カスタムスクランブラーの特徴とはすこし違っているのかもしれません。
ネオスクランブラーとしてなら高評価を付けたいところですが。
検証3.小さくフォークに寄ったヘッドライト
CL250もそうでしたが、さまざまな法規制に適合させつつ、しっかりと「らしさ」が感じられるヘッドライトです。ライト内部に複数の光源のあるLEDヘッドライトなので好みは分かれそうですが。
ヘッドライト周辺はもとより、このキャバレロシリーズは各部部品の高級感が非常に高く、それが評価を底上げしている面はあります。
検証4.最小限のメーター
シンプルなデジタルメーターが使われています。でもメーター回りは明らかに国産メーカーとは一味違う高級感を感じます。
先ほどもすこし触れましたが、メーター回り、トップブリッジ、いたるところがアルミ削り出しの高そうな部品が奢られているのです。らしさよりもコックピットの高級感につい目がいってしまいます。
検証5.短いシート
スクランブラーを彷彿とさせるタックロール風の処理、タンデムでも乗り心地よさそうな大きさです。実際にまたがってみても、乗り心地は悪くありません。
カスタムスクランブラーの場合、シートが結構固いことがあります。実用性とデザインのバランスが上手くとられていて好印象です。
検証6.リアツインショック
不適切と言えば聞こえは悪いですが、無理にツインショックにこだわらなくても本格的なスクランブラーが作れるのだと、ファンティックが実例を示したのだと思います。ですが古典的スクランブラーのテンプレートからは外れるので判定はNG。
検証7.基本的にアップマフラー。ただし必須ではない。
Arrow製の2本出しマフラーはとてもスタイリッシュです。
このマフラーさえ付いていたらCB250Rでさえスクランブラーに見えてしまいそうなほどのマフラーです。
検証8.合法な範囲で不要な物をすべて取り除いたミニマルな構成
これも難しい検証項目ですね。あくまでもカスタム手法ですから。
付くべきものはついていて、その中で必要最小限というのが要点です。
そこで評価ポイントを無理やり作りました。
見た目印象としてゴチャゴチャしていなくて、シートレール後端がリアアクスルシャフトあたりまでの短さであればOKとして、今回は適切と判定します。
検証9.トップエンドのパワーよりもトルクを優先した空冷単気筒もしくは2気筒エンジン
CL250の時にも書きましたが、不可能ではありませんが、各種規制を乗り越えて空冷限定というのは条件が厳しいと思われます。少々甘い判定となりました。
検証10.視覚的にロードバイク起源を失っていないこと。
文句なしの適格です。フロントタイヤを17インチ、マフラーをダウンタイプに変えるとネオカフェレーサーでも通用しそうです。
結果
新型CL250よりも低い適合率となってしまいました。
ですがこれは決して悪いことではありません。古典的スクランブラーとは違っていても現代の解釈でネオスクランブラーを作ればこうなるという新しい指標ではないかと思います。
LEDヘッドライトや斬新なデザインの2本出しArrowマフラー、どこから見てもネオスクランブラー。でも細かいところは古典的ではない。ただそれだけなの思います。
古典的ではありませんが、実車を見るとわかるのですが、細かい部分も削り出しの高そうなパーツが奢られ、高品質なカスタムバイクの雰囲気を纏っています。
残念ながら250cc版は海外、日本ともにカタログ落ちてしまいました。
ですが125と500がまだ残っており、さらにヤマハエンジンを搭載した700も登場を控えています。
これからもキャバレロスクランブラーは注目していきたいと思います。
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