ヨーロッパを走るバイクたち(2) 日本メーカー | ヤマハ・スズキ編
さて、あまりに大量に写真を撮ってきていたため、1ページですべてのバイクを紹介することはあきらめ、いくつかに分けさせていただきました。
ここでは、ヨーロッパ、主にドイツ・オーストリアを走る日本メーカーのバイクを紹介させていただきます。
紹介するメーカーの順番は写真枚数の都合もあり、まずはヤマハ・スズキのバイクからです。
美しすぎる!ヤマハ会心のハイパフォーマンス・ネイキッド!
ヤマハ・FZ6 S2
いきなり超絶レアなネイキッドを発見です!
あまりにレアなので見たときヤマハの新型かと思いました。FZ6のメーカー・カスタム、S2モデルです。
通常のFZ6との違いは、純粋に走行性能の為に、わざわざ専用設計のアルミ押し出し異形断面スイングアームを新設計した力作です。
残念ながら後姿しか確認できませんでしたが、息を飲む美しさです。ヨーロッパで見たどのバイクよりも強烈に印象に残っています。
もし日本で乗っている方がいらしたら、ぜひ大切にしていただきたいバイクですね。
このバイクを見つけたのはオーストリア・ザルツブルクです。「ザルツブルク市街の歴史地区」としてユネスコ世界遺産登録されている場所なのですが、ドイツ・オーストリアはいたるところが世界遺産登録されています。
モーツァルトが生まれてから25歳までを過ごした街として有名で、たくさんの観光客で賑わっている街でした。
ただ、寒い地方のせいか料理は大変塩辛く、スープなんて飲めたもんじゃありませんでした。
同じ料理を頼んでいるオーストリア人のじい様がその塩辛いスープに、さらに大量の塩を振っている姿をみていると、自分はレストランから何かの嫌がらせを受けているんじゃないかと勘ぐってしまいます。実際はそんなことはありませんでしたが。
大人のスポーツネイキッド! ヤマハ・XJ600N Diversion
メーカー:Yamaha(ヤマハ・日本)
モデル:XJ600N Diversion (1992-1995)
エンジン:599cc(空冷4ストローク4気筒・2バルブ)
最高速度:178.6km/h
他メーカーが500cc並列2気筒(4バルブ)エンジンを採用してロングセラーモデルを連発している中、ヤマハは500ccロードスポーツを出さずになぜか600cc空冷並列4気筒(2バルブ)エンジンを採用するという選択をしました。
600ccクラスは当時GSX600Fの様な高性能モデルがラインナップされていることもあり、ディバージョンは苦戦を強いられます。油冷4バルブ並列4気筒モデルに対して、空冷2バルブ並列4気筒で挑んだのですから、当然そうなりますね。
自然体で乗る・エンジンパフォーマンス以外の価値観を前面に出すのはアリですが、残念ながら2バルブ4気筒ではエンジンが中途半端すぎました。
もしディバージョンが空冷4バルブ並列2気筒エンジンを採用していたとしたら、ライバルに対して軽快なハンドリングと自然なエンジン特性を武器に、もっと広く愛されたに違いない1台です。
ジャパニーズ トラディショナル ネイキッド!! ヤマハ・XJR1300
メーカー:Yamaha(ヤマハ・日本)
モデル:XJR1300 (1998-)
エンジン:1251cc(空冷4ストローク並列4気筒)
アウトバーンのサービスエリアで見かけた1台、空冷ならではのフィーリングを大切にした典型的なジャパニーズ・ネイキッドの雄! XJR1300です。
ホンダのクルーザーやKTM、B-Kingさん達の一団です。
大型4気筒エンジンと車体のマッチングに優れ、非常に乗りやすく日本で人気のあるモデルですが、欧州へ輸出もしていたのですね。
4本出しマフラー、ウインドシールドと軽くカスタムしてあります。
ミドルはスタンダード・ネイキッドが、大排気量においては個性的なネイキッドが好まれる欧州でXJR1300を見るとは思ってもみませんでした。
マッチョと呼ぶな!マッチョの王様、マッチェスト様と呼べい!!
スズキ・B-King
メーカー:Suzuki(スズキ・日本)
モデル:B-King
エンジン:1340cc(水冷4ストローク並列4気筒・164bhp)
最高速度:243km/h
重量:235kg
「先鋭的なデザイン、ハイパフォーマンスエンジン。このふたつがあれば他は何もいらないのです」
そんな潔い風格をまとったストリートファイター系ビッグネイキッド、B-Kingさんです。
思わず「さん」づけで呼んでしまうほどの圧倒的な迫力と存在感を持ったバイクです。
ネイキッドクラスでこのB-Kingと競合できるほどの存在感を持っているのは、ヤマハのMT-01、V-MAX、BMWのK1300R、ホンダのX-11、ドゥカティのディアベルくらいではないでしょうか。
この類のバイクは用途だとかバランスだとか言っていると購入できない、
一目ぼれでしか買えないロマンバイクです。
ヨーロッパに渡り希少バイクに出会ってばかり。楽しくて仕方がありません。
欧州定番ネイキッドモデル!派生モデルも盛りだくさん!
スズキ・GS500
メーカー:Suzuki(スズキ・日本)
モデル:GS500 (1989-)
重量:174kg
エンジン:487cc(水冷4ストロークDOHC並列2気筒)
欧州では定番ネイキッドとして有名なGS500です。初出の際はGS500Eというモデル名でした。
日本でもダウンサイジング版のGS400Eが一時期販売されていましたね。
欧州でも20年以上愛され続け、派生車もたくさん販売されています。
カワサキ・スズキの500ccパラレル・ツインのコストパフォーマンスに優れたモデルの成功をホンダは後追いする形でCB500を販売、CBF500に進化、2013年にはニュー・CB500シリーズを販売、ホンダのミドル・パラレルツインは現在も好調なセールスを続けています。
さて、撮影地はオーストリア、音楽の都ウィーンです。歴史的建造物が建ち並ぶウイーン歴史地区はユネスコ世界遺産に登録されている街です。
街中はZARAやH&Mといったファスト・ファッションブランドのショップやスワロフスキー本店が建ち並ぶショッピングセンターの様相ですが、すこし小道に入ると小さな雑貨屋さんやカフェが立ち並ぶお洒落な街でした。
フルカウル・ツアラー仕様に改造されたミドルスポーツ!
スズキ・GSX600S バンディット
メーカー:SUZUKI(スズキ・日本)
モデル:GSF600S Bandit (2000-2005)
乾燥重量:209kg
エンジン:600cc(空油冷4ストローク並列4気筒・80hp(10,500rpm))
そろそろ10年選手! 輸出モデルの600バンディットですが、まだまだこれからです。
新車と見まごうほどの綺麗なタンクが印象に残っています。
輸出専用モデルの600Sはハーフカウル仕様しかないはずですが、なぜかフルカウルを纏っています。
デザインは純正かと見まごうほどよくできていました。
ボク25才!まだまだ駆け回るよ!
スズキ・GSX750F
メーカー:SUZUKI(スズキ・日本)
モデル:GSX750F (1988-1997)
重量:235kg(209kg)
エンジン:748cc(空油冷4ストローク並列4気筒・106hp(10,400rpm)・7.5kg-m(9,800rpm))
初期型なら25年物、最終型でも16年という、すでにビンテージと呼ばれてもおかしくないスズキのロングセラーモデル、GSX750Fです。
日本ではほどんと見ることのなかった不人気車でしたが、ヨーロッパでは長く愛された1台です。懐かしさで目頭が熱くなってきます。
当時のGSX-Rとほぼ同じディメンションのエンジンをスチールフレームに搭載したフルカバード・ツアラーでした。
無造作に荷物を載せていますね。長旅の途中でしょうか。
すでにアンダーカウルは失われています。古いバイクを現役でガンガンこき使われているさまは、おっさんライダーのささくれた心をほっこりさせてくれます。
きっとこれからも何万キロとヨーロッパ中を走り周るのでしょうね。
リアル・ビッグトレール! スズキ・DR650RS
メーカー:Suzuki(スズキ・日本)
モデル:DR650 RS (1990-)
シート高:890mm
乾燥重量:163kg
装備重量:184kg
最高速度:130km/h(約160km/h)
エンジン:640cc(空冷4ストロークSOHC単気筒・46hp/6,800rpm)
オーストリア・ウィーンの南西部にあるハイリゲンクロイツ修道院に立ち寄った際におみかけした方です。愛車はDR650RS、オフロードの走破性だけを追求したリアル・トレールバイクです。
写真のモデルはなんとセルなしモデルです! 650ccシングルのケッチンってどんな威力なんでしょうね。想像するだけで思わずスネをさすりたくなります。
オーナーさんがいらしたので、一緒に記念撮影をしていただきました。
ちょっと話しをしてみました。このバイクで沢山旅をされている様子でした。
トップケースが付いていますが、両サイドのステーはパニアケース装着用でしょうか。かなりしっかりしたものを取り付けておられます。
実はこのDR650RS、本記事中もっとも注目していただきたい1台なのです。
1990年代初頭に出現した初期のアドベンチャーバイクたち
このモデルは元々オフロード走破性能が高い・・・というかオフロードを走る事しか考えてない造りをしているトレールバイクです。まともに扱える速度は130km/hそこそことはいえ、トップ・パニアフル装備のDR650RSはまさに初期のリアル・アドベンチャーと呼ばれるに相応しいバイクではないでしょうか?
このDR650RSに先立ち、1988年にホンダ・アフリカツイン、スズキ・DR750S(後にファラオの怪鳥と呼ばれるDR800Sの前身)が、翌1989年にはヤマハ・XTZ750 スーパーテネレといった実用的な最高速度150km/h以上、航続距離450km前後のラリーレイドのレプリカモデルが登場しています。
1980年代後半から1990年代前半に掛けて登場したこれらのラリーレイドのレプリカ達が今のアドベンチャーバイクの元祖なのは間違いありません。
しかしラリーの世界において軽量化がより強く求められるようになり、またレギュレーションによる排気量の上限設定も相まって、エンジンは小型化していきます。
当時の大排気量レプリカ達は活躍の場を公道に移し、DR650RSのオーナーの様な、以前からトレールバイクに箱を付けてツーリングを楽しんでいた層に広く受け入れられました。
それは最高速度130km、航続距離350km前後のトレールバイクよりも、最高速度150km、航続距離450km前後のラリーレイド・レプリカの方が、長大な欧州を走る上で都合が良かったからに他なりません。
以後、フロント21インチのビッグトレールはツアラー用途から本来の用途、トレール、ラリーレプリカとして進化を続け、フロント21インチアドベンチャーバイクとの境界が曖昧なまま現在に至ります。
そして、現在のアドベンチャーバイク達の起源、ラリーレイドレプリカ達は、欧州路を走るライダーの要求を汲み取りつつ、21インチ、19インチ、17インチとオフロードとオンロードのバランスによる細分化が進みます。
このDR650RSはアドベンチャーバイクと呼ばれるジャンルが出現しはじめる1990年初頭に思いを馳せさせてくれるのでした。