組み立て工程
とりあえず部品の下ごしらえは終わっているので今夜は組み立ててみます。
組立会場を居間にうつし、助手の愛娘(3才)と一緒に作業します。
1.ガイドブッシュをインナーチューブに差し込む
この部品は最終的にアウターチューブに圧入されます。
2.スライドメタルをインナーチューブに装着する
スライドメタルはアウターチューブ内側に直接接触する部分です。
ブログのOH作業ではこのスキ間にマイナスドライバーを突っ込んでいる写真をよく見ますが、スキ間をツメでちょっと広げてやるだけで簡単に着脱できる部品です。
3.ダンパーロッドをインナーチューブに入れる
ダンパーロッドにはフォークが伸び切った時の衝撃を和らげる小さなスプリングと樹脂製ピストンリングを忘れずに取り付けておきます。
4.ダンパーロッドを下へ移動させる
5.オイルロックピースを取り付ける
6.各部にフォークオイルを塗布
このあとアウターチューブに突っ込むのですが、その前にスベリをよくするためにフォークオイルを塗布します。
ベタベタにする必要はないです。軽く表面が濡れる程度で十分。
7.インナーチューブをアウターチューブに差し込む
ここでインナーチューブをアウターチューブにそっと差し込みます。
8.ダンパーロッドの仮止め
本締めは芯だしをしてから。
メタルやシール類が圧入されたあとにサスをフルストロークさせて締めこみます。
9.フォークを立ててガイドブッシュの向きを調整する
だから合口をこの時点で調整します。
加減速のときに前後にコジる荷重がかかるので合口をサイドに向けます。
ただしこれがどの程度重要なのか不明です。
市販のリペアマニュアルに、このブッシュの向きについての特記はありませんでした。
特記はありませんでしたが、ごく普通のショーワの正立サスですし、古いセオリーに従います。
10.ガイドブッシュの上にワッシャーを乗せる
ガイドブッシュの合口を定めたら、この上にワッシャーをセットします。
このワッシャーはバックアップリングと呼ばれるもので、オイルシールの変形を抑制するための機能部品です。
決してただのスペーサーではありません。
そして裏表があります。
ピカピカでカドが滑らかな方がオモテ。
ツヤ感がなくてバリのある方がウラです。※しまとも流で勝手にそう呼んでます。
どっち向きが良いのかは諸説あります。
設計者的な視点からだと向きはどちらでもいいです。
バリにも公差があります。ちゃんと守っている部品なら特に方向を気にする必要はありません。
そもそもバリが問題になる場所なら、打ち抜きのバックアップリングなんて部品の選定ミスでしかありません。
ちなみにしまともはピカピカの方(バリの無い方)をオイルシール接触面に向けます。
11.ガイドブッシュの圧入
ここからは後戻りができなくなるので、念のため余った部品がないか、十分にチェックします。
組み立てミスがないことを確認したら、適当なパイプを乗せてさきほどのワッシャーをこう、ぐっ!ぐっ!と押し込んでみます。
表面もフォークオイルで濡れているので、叩かなくても入ると思います。
どうしても圧入できないときだけ、ハンマー等で叩きこみます。
12.オイルシールの挿入
オイルシールには向きがあります。
刻印とかアルファベットのある方が外側です。
装着前にオイルシールの内側(リップのある方)にはラバーグリスやシリコングリス等を塗布しておきます。
ちなみにアウターチューブとの接触面にはグリスやフォークオイルは塗りません。
今回は最初からグリスがついていたのでそのまま突っ込みました。
フォークのインナーチューブ表面も軽くフォークオイルを塗布しておきます。
ビニール袋をかぶせた上から差し込んでいきます。
あとは先ほどと同じように、パイプを使って上から圧入します。
フォーク側の表面が綺麗なら叩かなくても入ると思います。
13.外れ止めのクリップを装着
特にコツなんてものもなく。
インナーチューブにキズがつかないようにするくらい?
最後にグリスで表面を処理したダストシールをハメて完成。
14.ダンパーロッドの固定ボルトの増し締め(ダンパーロッドの芯出し)
フォークを何度かストロークさせてから、フルストロークさせます。
その状態のまま固定ボルトを21N・mで増し締めします。
インナーチューブ内部で若干の『すきま』をもったフリーの状態のダンパーロッドは、このように芯出しをしながら増し締めすることで内部抵抗を減らし、作動性を良くし、部品を長持ちさせることができます。
ガイドブッシュ、スライドメタルを圧入する前に固定ボルトを締めてしまうと、完成後に内部で部品同士が強く干渉することがあるのでかならず芯出しをしましょう。
ところでフォークをバラしたりホイールの着脱まで自分で手を出すなら、トルクレンチはそろそろ必要です。
アクスルシャフト、アクスルクランプボルト、ダンパーロッドの固定ボルト、ステム周りのフォーククランプボルトなどなど。
今回の作業にはしっかり締結トルクを管理すべき場所が目白押しです。
今回の作業で使ったトルク範囲はだいたい20~50N・mあたり。
私同様、おっさんが片手間にやるレベルの整備なら20~100N・mレンジのトルクレンチが1本あれば足ります。
レンジの上限下限付近はやや不確かなので、本気の整備マニアはレンジ違いを複数本用意するそうですが。
そこまでいくとちょっとやりすぎ感もありますが、このレベルの作業ではトルクレンチは絶対に必要なので最低1本は用意しましょう。
さて、あと一本組立てて今夜の作業は終了です。
ここまでの所感
バラすのは油で汚れるので作業としては結構面倒です。
ですが各部品はすでに洗浄後のキレイな状態。
あたりを汚す危険性はほとんどありません。
組立は暖かい部屋で作業できて、この時期ありがたいです。
次回はフォークオイルオイルの投入と車体への組付けです!
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